進まないスモールM&A
後継者不在で譲渡を考える売り手企業があり、課題解決のため、買収を考える買い手企業があります。売り手と買い手のニーズが一致しているにもかかわらず、中小企業のM&A(スモールM&A)はいまだ活性化しているとは言えません。
その理由は以下の点にあります。
①M&Aの専門家の不足
M&Aの仲介にあたる専門家は、いわゆるメガバンクに代表される大手金融機関、外資系金融機関、証券会社等などでした。それに加え最近は、中小企業を専門とするM&A仲介専門会社も現れ、その会社自体が株式上場を果たしています。しかしそれら仲介専門会社がターゲットにするのは売り上げや譲渡金額が数十億円を超える大手企業が主となっています。中小企業の専門会社も多くは譲渡金額3億円以上が主ターゲットとなっているようです。こうして多くの専門家が比較的大手といわれる「中堅中小企業」を対象に莫大な利益を上げているのです。仲介手数料が譲渡金額に比例するM&Aの世界で、わざわざ中小零細企業に焦点をあてて仲介を行う専門家が少ないのが現状です。
②M&Aの仲介手数料の高さ
それに輪をかけて、中小零細企業のM&Aの足かせとなっているのが、高額な仲介手数料です。M&Aの仲介手数料は多くの場合「レーマン方式」と呼ばれる計算式で算定されますが、ほとんどの会社では、これに1000万円、2000万円という最低手数料基準を設定しています。
どれだけ売り手と買い手のニーズが一致しても、仲介にあたる専門家の手数料が高いため結果として、依頼できないケースが多いのです。
③M&Aマッチングシステムの不備
従来、秘密保持の観点からM&Aのマッチングは社内外の専門家同士のアナログな情報交換が主となっていました。しかし今後、数ある売り手と買い手をマッチングさせるためには、大きなデータを集約させるマッチングシステムが必要となります。行政機関では各都道府県に設置された事業引継支援センターを窓口としたデータベースの構築を進めていますが、いまだ情報量は十分とはいえません。最近では民間企業、それもM&A専門会社のみならず人材紹介などのM&A専門と異なる企業が、このM&Aのマッチングサービスに相次いで進出してきました。
われわれも試しに、ある民間企業のマッチングサービスで買い手を募集したことがあります。結果は、3日間で50件の問い合わせがありました。しかし、話を進めるにつれて次々と脱落してゆき、結局膨大な時間を費やしながらも成約には至りませんでした。事前情報のまったくない、顔の見えないインターネット上での匿名企業であるため、マッチング比率が低いというのが正直な感想です。反面、3日間で50件の候補先をリストアップできるのは大きな魅力でもあります。
いずれ、このようなオープンマッチングサイトがM&Aの一つの流れをつくるのかもしれません。しかし、そのためには、登録者の選別や情報の信頼性など、いくつかの課題を解決しなければなりません。