チェーン店で活用されるM&A戦略

チェーン店のM&A

「変わりゆく顧客のニーズに適応するために新業態の開発は必要だが思うように進んでいない」
「労働人口の減少から働き手の不足が発生している」
「低価格化競争と原価の高騰によるコスト増加の負担が大きい」
「オーナーの高齢化に伴い本部および加盟店の事業継続に不安が出てきている」
など、チェーン店が抱える課題が顕著になっています。
そのような中、M&Aという手法を使うことにより、これらの解決を図っていく動きが活発となっています。
今やM&Aはチェーン店にとっても有効な経営手段の一つとなっています。

様々な場面で活用されるM&A

1.新業態の売却・買収

  • 自社の規模感では思うほど伸びなかった新業態を大手チェーンが中堅チェーンに売却。
  • 小規模チェーンが立ち上げた新業態で成長性は見込めるが、自社だけでは更なる発展が難しいと判断し大手チェーンの傘下に入ることで全国展開を目指す。
  • 直営店は自社でやるが、FC展開権のみ展開実績のある同業or他業界大手チェーンに売却することで資本を持たず収益率を向上する。

2.財務バランス確保のための直営店・エリア権利売却

  • 不採算事業の売却により多額の利益の獲得、事業構造の根本的な改革を実現。
  • 自社にとっては不要事業であっても、他社にとっては必要な事業であるケースあり。
  • 売却利益に加えて、不採算事業に投入していた経営資源が余裕資産として残り、それらを主力事業に集中させる事で、全社的な収益構造の改善を図る。

3.既存(直営)店引継ぎ型のFC展開

  • すでに営業・実績のある直営店をそのまま引き継いで独立・開業が出来るFC制度。
  • 加盟者は、物件探し・設備準備の時間が省略できるうえ、安定キャッシュフローが見込みやすい。開業後のトラブルも起きづらい。

4.本部・加盟店オーナーの事業承継

  • 本部・加盟店オーナーの高齢化・健康状態の不安に伴い、万が一に備えた事業承継の準備。後継者不在を原因とした廃業を回避するための親族外承継(M&A)の準備。
  • オーナーの急死に伴う、事業継続の為の専門家による支援と事業引継ぎ(売却)先のリサーチ。

5.エリア展開戦略(拡大・縮小)

  • 苦手なエリアへ拡大展開するため、そのエリアを得意とする中堅・小規模チェーンを買収して速やかな展開を図る。
  • ドミナントエリアから離れた直営店を、同エリアで他業態のチェーン運営で実績のある他社に売却することで経営効率を上げる。

チェーンビジネスにおけるM&Aの具体的活用事例

事例1|ファストフードチェーン:顧客層拡大・バリューチェーン強化

A社はリーズナブルな価格帯でのファストフードを提供。既存事業とは異なる客層獲得のため、ファミレス、ハンバーグ、丼もの等チェーンのM&Aを実施。さらに、A社の強みである商品の調達・流通・販売のマーチャンダイジング機能をより強化するため、スーパーマーケットも買収。今後も外食産業だけに留まらず、小売業界なども視野に入れ、調達・流通・販売の一体化していくことを狙いとしている。

事例2|ファストフードチェーン:業態拡大・提携先の従業員を守る

B社は既存事業以外の業態の拡大を目指し、うどんチェーンを完全子会社化。
その後、人気ラーメン店を複数運営するU社との資本提携を実施。B社の掲げる業種、業界を超えた価値提供を目指すビジョンと、U社を成長させて従業員を守るという方向性が一致したうえでの経営判断。ガバナンスの強化やグローバル展開を見据えたM&Aであるという点に注目が集まる。

事例3|FCチェーン:既存店引継ぎ型のFC加盟

FC加盟による開業にあたり、直営店など、すでに営業している店舗をそのまま引き継いで独立・開業が出来る制度。
加盟者からすると物件探し・設備準備の時間が省ける上、過去の実績から一定の収益が予想され、安定した売上が見込める。本部としては加盟店募集もしやすく、開業後のトラブルも発生しづらい。

事例4:ファストフードチェーン:両社のノウハウを組合わせた新展開

D社は、和食居酒屋を運営しているW社と資本業務提携を締結。
W社は居酒屋が主軸となっており、国内だけで約110店舗、海外にも複数店舗を展開しており、和食業態での店舗の運営ノウハウを有する。D社は自社のFC店舗の運営ノウハウとW社のノウハウを組合わせ、和食のFCの店舗を増やしていく。

事例5:テイクアウトFC本部:展開地域拡大・異業態拡大

E社は、複数業態を展開するY社を子会社化。E社は関東の約170店舗に比べ、関西では17店舗と店舗数を拡大できていない。一方Y社は関西での店舗展開に強みを持ち複数業態を展開。E社は西日本でFC展開を行う際に、Y社を西日本エリアの本社機能として据え管理体制を確立。異業態に関しても、E社のFC店舗の運営ノウハウを活かして店舗拡大を標榜する。

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