なぜ会社を譲渡するのか? ~内部的要因~
会社内部の要因によって譲渡を選択するケースが、最も多いといえます。内部といっても要因は様々ですが、おおむね以下のようなものが挙げられます。
①後継者不在
後継者不在を理由として譲渡を選択するパターンです。親族内、社内に後継者がいない場合の第三者への承継として検討されます。また最近では、後継者の特性や他の経営資源とのシナジー効果を考え、後継者の有無にかかわらず積極的に外部への承継を選択する経営者も増えてきました。
<事例>
地方で布団製造会社X社を営むK社長は事業承継を検討する段階で、一人息子への承継を考えていた。しかし既に息子は東京で生計を立てている上、先行き不透明な業界の動向や、自社の有利子負債の大きさを考え、親族内承継を断念。同業者へのM&Aを実行した。
看板会社を営むB社長は、順調に会社を成長させ上場を目指していた。しかし一人息子の管理能力と本人の意思を考慮し、異業種ながら若さとバイタリティーを持つD社長に経営を託すことに決めた。
②経営不振
資金繰りの悪化や融資の返済滞納などからやむなく譲渡を選択するケースです。財務的基盤がぜい弱な上、早期のM&Aが求められるため、譲渡は容易ではありません。しかし決算書に表れない、見えない資産(のれん)の魅力や価値を買い手にアピールできれば成約するケースもあります。
<事例>
地方でミニコミ誌を発行するT社はWEBへの転換が遅れたため、経営危機に陥った。しかし、社員の企画・編集能力の高さと、顧客とする行政機関とのパイプに注目した調査会社が、一定の業務提携期間を経て子会社化した。
都内で印刷業を営むW社は、デジタル化の波に乗り遅れ経営不振に陥った。しかしシルバー層の顧客開拓を目指す広告代理店が、印刷設備と若く優秀な社員を保有するW社の買収を行った。
③事業の選択と集中
グループで複数のビジネスモデルを所有しながら、収益性や将来性に問題がある事業や一部の店舗を切り離して譲渡するケースです。ノンコア事業の切り離しや不採算事業の撤退などを理由とするものです。
<事例>
関東を中心に喫茶店を展開するR社は、人材不足と管理コストの削減を目的に、関西と中部にある店舗7店舗を地元の同業者に譲渡し関東での出店に注力することにした。
IT事業で急成長するG社は将来性の高い本業に経営資源を集中させるべく、5年前に新規事業としてスタートしたカルチャー教室事業を他社に譲渡した。