企業ドクター貝井の【ためになるM&A知識】 「こんなに差がある老後資金 M&Aと廃業」

ためになるM&A知識

「M&Aとか面倒くさそうなので、そのまま廃業した方が楽じゃないですか?」

後継者がいない経営者からのよくあるご質問です。M&Aが楽ではないのは事実ですが、それでも私は廃業よりもM&Aを強くお勧めします。まず、お金(老後資金)について考えてみましょう。

廃業した場合、理論的には、「時価純資産」に該当する金額が経営者の手元に残ります。例えば、貸借対照表の純資産5000万円で、所有している土地に1000万円の含み益がある場合、純資産5000万円に土地の含み益1000万円を加算した6000万円が残ります。

しかし、実際に廃業することが周囲に知られると、所有している在庫や固定資産は足許をみられて買い叩かれ、一方で買掛金や借入金は、債権者たちがわれ先にと回収にやって来ます。その上、廃業手続きには弁護士報酬などのコストが思いのほか掛かります。先ほどの理論上の「時価純資産」6000万円が手元に残るはずはなく、現実には3000万円程度しか残らないこともありえます。

それでは、M&Aで会社を売却した場合はどうでしょうか。スモールM&Aにおいて一般的な「年買法」という評価方法では、「時価純資産」に「営業権」を加算した金額で会社を売買します。例えば、時価純資産が先ほどと同じ6000万円であっても、営業権の評価が4000万円であった場合、6000万円に4000万円を加算した1億円が手元に残ります。

心理的な面でも、廃業は、取引先や従業員に頭を下げて回るなど、後ろ向きの作業が多く、ストレスも大きいのです。一方でM&Aでは、もちろん買い手とのシビアな交渉もありますが、買収後のビジネス展望談義など前向きな話も多いのです。

「自分が人生を懸けてきた会社が今後も存続するというのは、自分の人生が認められたようで嬉しい」

これがM&Aで会社を売却した経営者の皆様からいただく最も多い喜びの声であり、私たちもこうした声をいただいたときが、仕事のやりがいを最も感じるときです。

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